釈尊の生母摩耶夫人が、出産のため生家に帰る途中、ランピニオンの菩提樹の樹の下で釈尊を生んだ。
旅の途中にもかかわらず、釈尊は安産で無事に生まれでた。このことから菩提樹を無憂樹と言い、その華を無憂華と称する。
転じて人においてどのような境遇であろうと、清い心を持ち神・仏の道を歩くことで憂いに汚されることの無い人生をおくることをも意味する。

このホームページが常に無憂華を志向する救いとなればと願います。
「無憂華(憂い無き華)の如き人生を生きるために」


 vol.002  市川昆監督の逝去を悼む

 市川昆監督は、長きに渡り数多くの映画を残していますが、手掛けた作品は、どれも高いレベルの作品群でありました。傑作「東京オリンピック」をはじめとして独自の映画世界を有した巨匠でもありました。最近まで自身のリメイク作「犬神家の一族」を完成し、90歳を越えてなお新作を考えていたと聞いています。高齢であっても元気で、それ故急逝の感が強くします。

 ほんとうに惜しむべき監督で、私見ですが日本において指折りの監督でありました。

 映画も他の芸術やもろもろの分野同様、人の好みが幾重にも発生し、誰がすごい、すごくないの話題はきりがないし、どの視点で評価の物差しを当てるかで変わってしまいます。小難しい監督論は、評論家のみなさんにまかせるものとして、市川昆監督の称賛されるべきはまずその独特の映像スタイルであることは誰も異論のないところでしょう。ワイドを使わず、スタンダードサイズにこだわり、またシーン展開においても印象付けにソラリゼーションやモノクロカットの挿入など多彩な技法を駆使することが特徴でした。通常駆使する技法に流され嫌味になるのですが、モダン、スタイリッシュな映像を紡ぎだしたのです。

 三島由紀夫の「金閣寺」を映画化した「炎上」・島崎藤村の「破戒」の映画化・山崎豊子の「ぼんち」の映画化です。  市川雷蔵の代表作と言っても過言ではないのですが、和田夏十のシナリオ力もあり珠玉の作品となっていました。  近年といってもスタートから長年たちますが、横溝正史の金田一耕助シリーズは夙に知られたヒット作です。大衆性を踏まえながら質の高い娯楽映画としています。

 テレビにおいても、木枯らし紋次郎の監修がありました。

 タイトルバックの望遠ズーミングでのカットは鮮烈でした。  後年自身で映画化もしていますが、笹沢佐保原作のキャラクターを見事に作り変えており、市川監督ならではの作品に仕上がっていました。

 女優さんを綺麗に撮ることにおいても出色でした。  細雪の吉永小百合、金田一耕助シリーズの岸恵子、佐久間良子、古都の山口百恵、鹿鳴館の浅丘ルリ子等々。光と影のコントラストが巧みで1カット1カットがドラマチックなのです。

 興行的に盛り返していると言われる日本映画ですが、私には全く興味がありません。今時の監督にも誰一として興味がありません。何故かはまたの機会に譲るとしますが。

とまれ、戦前から戦後昭和まで、日本映画黄金期の監督達は素晴らしかったのです。  プログラムピクチャーの監督ですら、きちんと映画を作っていた時代でした。  日本の質の高い映画の技術は、現在の日本にはなく中国に引き継がれています。

 巨匠市川昆の死は、日本映画終焉の象徴であると思わざるを得ません。




バックナンバー

ハルセレクトドットコムロゴ